
結果として、リーグ戦では20位にいるということが事実であり、非常に危機感を持っています。チームの状況は戦い方が結果的に守備的になっており、能力のある選手がたくさんいるのに、躍動しない、走れないという状況で、勝ち星を拾えず、自信を失い、負のサイクルに入っていました。
そこで、パトリック キスノーボ監督にはまず「チームの空気を変えてほしい」「チームに自信をもたらしてほしい」そして危機的状況なので、「目の前の勝ち点を獲りに行く」という非常に難しい注文をしています。
その難しいチャレンジを本人が引き受けてくれているので、トレーニングの中でチームの空気も見るからに変わっていますし、そういった意味では非常に期待が持てる状況にはなっています。
クラブとしては、ACLエリートに出場し続ける、そして2029年にはクラブワールドカップに出場するということを変わらず目標に掲げています。
来年に関しては、ハーフシーズンですが、ACLエリートの出場権獲得のチャンスはありますし、もちろん2026、2027シーズンにもチャンスはあるので、そこで必ずACLエリートの出場権を獲得して2029年に向けていきたいと思っています。
短期的には5月の6連戦が山場だと思っています。ここでどういったパフォーマンスをしてどれだけ勝ち点を詰めるか、少なくとも勝率5割、6試合中3勝。できればホームゲーム4試合を全勝したいと思っています。ホームゲーム4試合があるので、チームがこういった時期だからこそたくさんの方にスタジアムに来場いただき、後押しをしていただきたいです。
新しい監督を外部から招くのではなく、パトリック キスノーボ氏に決定した理由は?
ヘッドコーチ就任前から彼のデータや過去に指揮してきたチームの結果、パフォーマンスを見た中でのヘッドコーチ招聘だったので、監督としても十分にやってもらえると思っています。
改めて監督とどういったサッカーを目指すのか。
もちろんアタッキングフットボールの体現が一番です。やはりこの4ヶ月間、縦への方向性が圧倒的に足りていないので、一番の課題として監督と共有しています。
外部から招くことは検討したのか。
常に検討はしています。監督の情報は常にいろいろな方からもらっています。
川崎戦の後にホーランド監督と一緒に歩んでいく、成長することを選んだと言っていたが、結果を残さなければいけないといった中での監督との歩み方はどう考えていたのか。
チームとしての成長はしなければいけないと思っています。今回のACLエリートで対戦したアルナスル、そして川崎フロンターレが対戦したアルアハリ・サウジを見ると、どう考えても今のJリーグのチームではACLエリートの優勝はまだ難しいと思っているので、そういった意味でもJリーグの優勝でも成長をしなければいけないし、今のチームはそれどころではない状況なので、そこからどう上に持っていけるかというところに関しては、キスノーボ監督と話していければと思っています。
あまり今まで数値的な目標はされてこなかったと思うが、その基準を示したことによってどういった変化があるのか。それが達成されなければ、他の方法を模索しなければいけないのか。
そういったつもりはないです。一つの目安としてそこを目指そうということで数字を挙げさせてもらいましたが、選手たち、チームは目の前の1勝を絶対に獲りに行くというのを当たり前にやっています。ただ、私の立場としてはある程度目安は持ってやっていきたいと思っています。おそらく応援してくれている方々も相当不安があると思いますし、今チームはどこに向かっているのかという疑問を向けられているのは事実なので、一つの目安を設定することはマイナスではないと思います。
今回、大島秀夫アシスタントコーチがヘッドコーチに就任したが、キスノーボ監督の要望があれば外部から招くといった選択肢もあったと思うが、今いる体制のなかで選択した理由は?
外国籍監督、コーチ、スタッフが来て日本のチームに対応するのは、やはり時間がかかると思っていました。ここで新たにまた外国から一人連れてくるといったことよりも、今はチームスタッフも一つになることが非常に大事で、今いるメンバーでもっと相互理解を深めてプロとしてチームスタッフもパフォーマンスをしてもらうということが一番大事だと思いました。
アタッキングフットボールという言葉はポステコグルー監督の時の成功体験とはJリーグの様相も変わってきて、縦に速くハイプレスといった相手と向き合わなければいけない中で、マスカット監督やハッチンソン監督はいろいろと模索してきたと思う。前のことを思い出すだけではおそらく勝つのは難しいと思うが、そこへの向き合い方は?
決して過去に戻るつもりはありません。ただ、このチームの選手たちが持っている能力や今まで培ってきたものは活かすべきだと思っています。そういった意味では縦への方向性は大事ですし、おそらく横浜F・マリノスにとってこれからJリーグでタイトルを獲るには大事なキーワードになると思っています。
ACLエリートで戦うにはまた違ったテーマが必要かもしれませんが、今のところはそこが大事だと思います。
縦に速いというのは結構履き違いになることもある。アバウトになってしまうこともあるが、F・マリノスは縦に速くなる中でもクオリティや狙いだったりは、アタッキングフットボールで作ってきたものであると思う。
それはシティ・フットボール・グループのスタイルであると思いますし、そのバランスは大事だと思っています。ただ、闇雲に前へではなく、ボールを保持できなければいけないし、相手のゴールを脅かす回数が圧倒的に増えなければいけません。自陣でボールをキープしているだけでは全く意味がありません。そういった意味では前への方向性とその時間やスペースをどのように理解してピッチ上で体現していくかが、これからのサッカーの難しさであるし、面白さでもあると思うので、そこは追及していかなければならないところだと思います。
ここ4ヶ月を見てきて、明らかに前の監督のサッカーに対して不満を抱えている選手がいると、こちらから見えていて、その中で一枚岩になり切れないままサウジアラビアに行ってしまい、あの結果になったと思う。モチベーションを上げきれなかった、目線を揃えられなかった選手を含めて、それをどう揃えてまた一つになろうと思っているのか。
キスノーボ監督に伝えたのは空気を変えることと言いましたが、その意味はサッカーを明示して、トレーニングで選手に落とし込んで、試合で体現して結果を残していく。しなければいけないのは、それだけだと思います。
とにかく選手たちはサッカーを楽しみたい、思う存分にプレーをしたい、能力を存分に発揮したい、その上でチームとして勝ちたいと思っているので、サッカーチームの監督というのは難しい仕事ですが、シンプルに練習でやるべきサッカーのスタイルを明示して、練習で落とし込んで、試合でプレーをさせ、結果を残していく。というサイクルを回していく。
これを監督は私たちと一緒にしなければいけないと思いますし、してくれていると思います。
監督交代で退路を断ったというか、かなり厳しい選択肢をとったと思うが、西野スポーティングダイレクター(SD)を含め強化スタッフができることとして、どういったフォローが必要になってくるか。
毎日できることをいろいろとしています。今いるメンバーで何ができるかというところで、監督が中心になって、チームスタッフが本当に一つの強いチームになること、そして選手たちに同じメッセージをみんなが伝えることが一番大事だと思うので、そのためにできることを毎日やっています。
6月の短期のウィンドウでプラスアルファは検討しているか。
もちろん常に検討しています。
サウジアラビアに行く前の浦和戦の後、ロペス選手とはどういった話をしたのか。
詳しいことは言えませんが、チームとしてサッカー選手としてしっかりと話をし、厳しいことも言いましたし、彼の心の内も話してもらいました。
監督とも話し、結果アルナスル戦ではしっかりとパフォーマンスしてもらおうと判断しました。
本人はどういった思いだったのか。西野SDはどのように伝えたのか。
私としては(ロペスのコメントに)誤解を招く表現があったと伝えましたし、またかなり厳しく伝えました。
正直、いろいろなことを考えましたが、行き過ぎた判断やアクションは今のチームにとって良くないので、何とか今いるメンバーがもっとパフォーマンスをしてもらうことを重視して、判断しました。
スタメンやベンチメンバーを選ぶのはキスノーボ監督だと思うが、新たな競争で期待するものは何か。
今年の最初から「オープンアンドコンピート」とチームには言ってきたので、各ポジションでしっかりとポジション争いをする、そのためには監督、コーチがしっかりとフェアに評価しなければいけないし、そのフェアな評価の下の起用をしなければいけないと思います。キスノーボ監督はそれができるし、それを大事にしようと当たり前に話をしています。そういった環境さえ与えれば、放っておいても出番がないからと文句を言うのではなく、フェアな評価をされていると思って不平を言うような選手はいないと思うので、当たり前にポジションでの争いは常に選手たちに求めたいですし、出れないからこそ頑張るといった姿勢を練習でも見せてほしいと思います。
今シーズンの頭に連戦対応の重要性を話していたと思うが、おそらくこの4ヶ月そこがうまくいかなかったと思います。ここから連戦になるが、キスノーボ監督と連戦対応で共有しておきたいことややらなければいけないと感じている部分はどこか。
連戦対応ですべきことは山ほどあって、極論はもともとの編成の厚みや揃え方といったものはありますし、シーズン中になるとトレーニング負荷だったり休暇、トリートメント、リハビリだったり、いろいろなところがありますが、今大けがの選手が何名か出ていて、それを予想外というと、それも含めてやらなければいけないと思いますが、現状では2チームで回すほどのゆとりを監督に与えられていないと思っています。その中で、今まで出番のなかった若い選手たちも含めて、チームのパフォーマンスを最大化してもらうといった意味では、チャンスを与えてほしいと思うし、ただ、勝ち星も重ねなければいけないといったところで難しい部分は感じています。
今シーズンの連戦対応で工夫したところは?
主にメディカル、フィジカルといった部分でのアプローチはしてきたつもりです。
なかなか目には見えないところですが、そこは効果を出していくには時間のかかるところなので、その課題感は前のチームにいたときにもありましたし、大事にしてきました。
選手の起用については、方針として若い選手もどんどん使っていこう、リスクがあってもそこに賭けようというのは今も昔も半年前も変わっていないです。
選手の起用はひとつ一つの試合をどう戦って、どう勝つかというところは、監督が考える部分なので、そこは介入しないです。ただ、試合の振り返りでいろいろな話をする中で、こういった選択肢はなかったのかなどは毎試合しています。具体的な起用に関しての話はしないです。
若い選手を起用しようという方向性を示していたとのことだが、ピッチ上では全く見られていないに等しかった。そこが選手の不満につながったのではないか。方向性の共通理解の深みが足りなかったのでは?
そこは、約束事として監督と契約する時に握り方とか、明文化してサインをするのはやり過ぎだとしても、もう少し、やれることはあったのかなと今言われて思います。そこで大事なのは、クラブが与えらる時間、成長という言葉すらもやはり、F・マリノスというクラブでは、もしかしたら許されないかもしれないし、与えられる時間がないかもしれないし。でも、その中でもその時間を確保して、必要な時間を投資しないといけないというところでのクラブとしての握りは、もしかしたらやれることはあるかもしれないです
5連戦があって、首位を狙うのであればすべて勝たなければいけないと思うが、短期的な目標はおそらく残留だと仮定すると2勝1分2敗などでも勝ち点を稼ぐといったところが大事になってくる。そういったことを考えると連戦のマネジメントはとても大事になるのではないか。
間違いなく体調やモチベーションも含め、選手のマネジメントはとても大事になってくると思います。
ホーランド前監督を解任して、その時点ですでにキスノーボ氏に任せることもできたと思うが、暫定的に2試合指揮を執らせたのはなぜか。
監督交代というのは様々な手続きが必要なので、そのプロセスに時間を要したというのが一番の理由です。大きなクラブで、決定にもプロセスがありますので、期間を要しました。
監督に空気を変えてほしいというのは、ACLエリートが終わってから伝えたのか。
浦和レッズ戦の前に伝えていますが、時間がなかったので、一回でやってほしいというわけではなく、今変えることはこうだよねといったことや、まずは選手に自信を与えてほしい
といった意味で空気を変えてほしいということをチームスタッフ全員に伝えて、チームスタッフも今まで以上の何か新しいチャレンジをしてくれていると思っています。そこはいつといったものはないです。
暫定的に指揮を執った2試合とも敗れてしまったが、キスノーボ氏が指揮をして空気が変わってきているなという印象も含めてACLエリート後に正式に監督になったといった流れか。
はい、そうです。
目の前の連戦も大事だが、またACLエリートに出ていくことやクラブワールドカップに出場することを考えたときに、今置かれた状況はとても難しく、目標設定も難しいと思うが、西野SDが考える現場への伝え方は?
今年のJリーグはそこまで差がないとは思っています。小さな差が大きな差だと言われればその通りだと思いますが。なので、このチームは選手たちの能力を発揮することができれば、今の鹿島であろうが柏であろうが十分勝てると思うので、その差はそこまでないと思っています。